フランスの港町シェルブールを舞台とした物語。
主人公は、自動車修理工として働く20歳の青年、ギイ。彼は祖母と二人暮らしをしている。
彼には、ジュヌヴィエーヴという恋人がいた。同町で彼女の母の傘屋を手伝う17歳の少女だ。
二人の関係は、周りの大人から見れば青い青い恋だ。しかし、二人は愛し合っていた。
物語は、三部構成で進み、
- 第一部は、「出発編」
- 第二部は、「不在編」
- 第三部は、「帰還編」
となっている。
主人公のギイが2年間アルジェリア戦争にて兵役へ務める「前」、「中」、「後」のお話だ。
あらすじ(ネタバレ)
出発編
ジュヌヴィエーヴは、彼女の母にギイへの想いを伝えるが、「気は確か?結婚するには若すぎるわ。あなたはまだ子供よ」と否定されてしまう。
また、20歳のギイは徴兵制のため、2年間兵役を努めなければならなかった。兵役前日、ジュヌヴィエーブは、ギイに「あなた無しでは、私は生きていけない。あなたが行ったら死んでしまう」と嘆く。彼女はそれほど、ギイのことを愛していた。ギイは「今限られた時間を無駄にしたくない。せめて素敵な時間を」と、ジュヌヴィエーブを自宅に招いて抱くのであった。翌日、ギイは兵役のため、祖母と祖母のお世話をしてくれている若い女性のマドレーヌに別れを告げ、家を出た。ジュヌヴィエーブは、ギイの家の前で待っており、別れを嘆きつつ、兵役のためアルジェリアへと向かうギイを駅まで見送るのである。そして、ギイとジュヌヴィエーブの二人は離れ離れとなってしまうのだった。
また、ジュヌヴィエーブ家はお金の問題を抱えており、カタールという紳士な男性に家の危機を助けてもらうのであった。
不在編
ジュヌヴィエーブの母は、家の危機を助けてくれたカタールを、自宅へ招こうとしていた。しかし、ジュヌヴィエーブの様子はというと、なんだかおかしいのだった。彼女は、ギイの子を妊娠していたのだ。娘から妊娠を突然知らされ、彼女の母は慌てる。そして、そこへカタールが到着するのだった。カタールはというと、娘さん(ジュヌヴィエーブ)と結婚したいという想いを、彼女の母へ率直に伝えるのであった。「妊娠」も「娘への求婚」も唐突なことだったため、彼女の母は、娘が妊娠していると言うことを、カタールに伝えることはできなかった。カタールは、「娘さんの意思を尊重したいので、求婚の話はジュヌヴィエーブには押し付けないでください。3か月後にまた来ますので、その時に娘さんに私から伝えます」と言い去っていった。ジュヌヴィエーブは、隣の部屋でそれを聞いてしまっていたのだが・・・。
3か月後、カタールは大きくなったお腹のジュヌヴィエーブと会った。妊娠していることを知らなかったカタールだったが、「お腹の子は私たちの子にしましょう」とジュヌヴィエーブを本気想っていることを告げた。
ジュヌヴィエーブは悩んだ末、カタールと結婚してしまうのであった。
ギイが兵役の間に。
帰還編
ギイが兵役から帰還すると、ジュヌヴィエーブが住んでいた、傘屋だった店は売りに出されていた。そして、ジュヌヴィエーブが結婚してパリへ行ったことを知る。ギイは人生に絶望した。兵役前に勤めていた修理工の仕事をまた始めたが、空虚な彼は自暴自棄になっており、仕事を雑にするようになっていた。ギイは上司に怒られ、口論になった勢いで修理工を辞めてしまう。そして、娼婦と遊んだりと、なげやりな生活を送るのであった。そんな中、ギイの唯一の家族の祖母が亡くなってしまう。お世話をしていたマドレーヌは、「私はもうここには居られない」とギイに告げるが、ギイは「一緒にいてくれ」とマドレーヌを引き留める。「昔と違って、なげやりな今のあなたは嫌い」とマドレーヌはギイに言うが、ギイの説得の末、マドレーヌは留まることを約束した。
マドレーヌのおかげか、ギイは改心し、夢だったガソリンスタンドを始める。
物語は、数年後の12月の冬のシーンに変わる。
ギイは、マドレーヌと結婚したようだ。二人には既に息子がおり、その名は「フランソワ」と名付けられていた。マドレーヌは、クリスマスプレゼントのためにか、息子を連れて、雪の中、おもちゃを買いに行くのであった。
そんな中、ギイのガソリンスタンドに一台の車が停まる。そこには、見覚えのある顔が。そう、ジュヌヴィエーブが乗っていたのである。ギイは、ジュヌヴィエーブを事務所へと案内する。彼女は義母のところへ行った帰りに、懐かしく思ったのか、まわり道をしようだ。「シェルブールへ戻ったのは、結婚以来よ。会えるとは思わなかった」と話す。ギイは「子供の名前は?」とジュヌヴィエーブの車に乗っていた子供について尋ねる。ジュヌヴィエーブは「『フランソワーズ』あなたによく似ているわ。会ってみる?」と答える。ギイは、無言で首を横に振り、「もう行った方が良い」とジュヌヴィエーブへ告げる。
ジュヌヴィエーブは別れ際、ギイに「幸せ?」と質問する。
ギイは、「幸せだよ」と答えるのであった。
ジュヌヴィエーブとフランソーズは去り、マドレーヌとフランソワが帰宅する。
家族団欒とギイは雪の中で遊ぶのであった。
【感想】
最初から最後までミュージカルなので、正直な感想としては、慣れるまでちょっとクドい。最初の方は、違和感をすごく感じてしまった。ただ、見ているうちに、そんなことは忘れてしまい、物語の内容に集中していた。ただ、ずっとミュージカルの映画は、もうごめんです。
ギイとジュヌヴィエーブは、別々の道を歩んでいくのだが、子供の名前が「フランソワ」「フランソワーズ」であったことから、少なからず、お互いのことを想っていたことが読み取れる。物語の中盤、ギイからジュヌヴィエーブへの手紙を読むシーンで、「フランソワとは良い名前だね」と書かれていたシーンがある。最後のシーンを読み取るに、「娘ならフランソワーズ、息子ならフランソワ」というやりとりをしていたのだろうと推測するが、果たして、ジュヌヴィエーブは、ギイに手紙で、彼の子の妊娠を告げていたのだろうか。それによって「あなたによく似ているわ」の意味が変わってくる。ギイが、無言で首を横に振った理由も変わってくるのだ。そこに面白さを感じた。
手紙で伝えていなかった場合は、ジュヌヴィエーブの言った「あなたによく似ているわ」は「あなたの子供よ」とそれとなく伝えるという意味になり、ギイが無言で首を横に振った理由は、「自分の子供と気付かなかった」という意味になるのではだろうか。
一方、手紙で伝えていた場合は、ジュヌヴィエーブの言った「あなたによく似ているわ」はそのままの意味になり、ギイが無言で首を横に振った理由は、「今の幸せを壊さないため」であろう。
まあ、前者は少し無理やりなところがあるので、十中八九、後者ではないかとも思う。
そしてラストシーンの「あなたは、幸せ?」というギイに対するジュヌヴィエーブの問いかけも、この映画の面白いところだろう。
ギイは「幸せだよ」と答えるが、ギイは本当に幸せなのだろうか。
問いかけた、ジュヌヴィエーブ自身は幸せなのだろうか。
考えさせられる。
だって、二人の子供の名前が「フランソワ」「フランソワーズ」なのだから……。
ミュージカルはともかく、深い映画だ。
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